中国茶の時間「茶詩・漢詩と中国茶と」小満のころ


 この日は、二十四節気の「小満」。
春に咲いた花の実が、なり始める頃。
今日決まったことは、大方うまくいくとされる日です。


日本では桜や桃、ぶどうの実がつきはじめ、
中国では、杏や梨、なつめの花が咲き、実をつけ始める時季だそうです。


今月の漢詩は、北宋の詩人 蘇軾(そしょく)の
「飲湖上初晴後雨」。
世界遺産にも指定されている、浙江省杭州にある西湖(さいこ)を
舞台にした詩です。


蘇軾は、蘇東坡(そとうば)とも呼ばれ、
浙江省杭州の知事を務めた、宋時代のエリート。


この詩のモチーフには、湖と美女が登場します。
四季折々に美しい景色を醸す西湖と、
「国を傾ける」ほど美しく、後に呉の王様に見初められる西子(せいし)
という女性。


湖は晴れても雨でも、まさによし。
淡粧濃抹総相宜。
その意味するところは、西子は、薄化粧でも濃い化粧でも、すべてよし。

そんな大らかな心地を詠んだ詩です。


「蘇軾はおそらく酒をイメージしてこの詩を編みましたが、
その心地は茶にも通じます」と黄先生。


漢詩の中から、好きな一節を選び、和紙に書き写しました。


今日の中国茶は「水仙茶」の荒茶。
水仙茶は、もともと広東省の大衆烏龍茶でしたが、
福建省武夷山に移され、ミネラル分が豊富な山の茶となりました。


この「水仙茶」は、実はまだ未完成品。
5月第1週に収穫したばかりの茶葉で、製茶の途中段階にあります。
収穫し、熱処理をして発酵を止めた状態で、
ふつうは出回らないもの。


烏龍茶として仕上げるには、
1か月ほど常温に置き、何度か熱処理を繰り返し、
軸を取り除き、茶葉だけを固くよじってようやく完成します。


今日の「水仙茶」は、枝もついた状態で
見た目はかなり野性的です。

この時期だけしか味わえないお茶を、じっくり飲みました。

点心は、芝麻焼餅。
湯は、梅湯。梅のシロップ煮です。
乾菓は、ナッツやグリーンのレーズンなど。
次回は、6月18日(火)に開催。
夏至」にちなんだ中国茶漢詩を楽しみます。